日本の中世には「縮小の美学」があったという

縮小

すべてのものは、拡大するより、縮小するほうが好ましい。
すべてのものを、やや小さめにつくれ。

これは「集落の教え100」原広司著, 彰国社, 1998年のなかの「教え」のひとつです。


私は食事に行くときは同行者との会話そっちのけで周りのテーブルの会話ばっかり聞いているのですが、今日のランチで隣に座っているおじさんは名古屋から出張できているようでした。曰く「錦がガラガラ」。飲み屋に人がいないということでしょう。他にも派遣切りが正社員切りに移行するのはもうすぐ、などと話をしていました。


そんな話を聞きながら、私の頭の中は「なんでいろんなことがこんなに膨張しきっちゃったんだろう」という疑問が渦巻くことに。事務所に戻り、書棚にある「集落の教え」を手にとって、この記事の冒頭の「教え」を手帳に書き込んだのでした。


この本は建築家の原さんが世界の集落を調査して、そこからの思考・思想を空間デザインの教えとしてまとめたものです。少しだけこの縮小という「教え」から抜粋してみましょう。「皮膚をすり合わせるようにしている状態が生まれるのが住居」とも思えるという中南米インディアの住居の写真を差しながら。

縮小気味の集落のほうが、密度が高く、美しい。人びとに温かな感動を誘う。
(中略)
集落の得意とするのは、大きな寸法のものを小刻みに変化させる手法である。今日の都市にあっては、対象とする人間の数も集落とは異なり、ヒューマンな寸法も小さな寸法であるとはかぎらない。とすれば、分節と変化の手法は学ぶべきところであろう。

この書籍は「集落」を、国、経済、社会、企業に置き換えると、建築関係以外の方でも、とても示唆に富むものになります。