事業戦略における「ありがとう理論」

きょうもドトール鳥羽会長の私の履歴書には、大事なことがサラッと書いてありました。


セルフではコーヒー1杯が200円が上限だと思っていたが、スタバが進出してきた時に280円で売れることを教えてもらい、高い家賃に対応した「エクセルシオール」を開発できたと。


新たな市場や商品を新規参入の企業が見つけ出してくれて、既存の企業がそこに追随するということはよくあります。この場合はスタバが新たな市場を創造して、ドトールが追随している。人によっては「なぜドトールが市場を創造しなかったのか」と悪く言う人もいるかもしれませんが、ドトールにとってはよっぽど効率的です。誰かが資源を投入して市場を掘り起こし、テストマーケティングまでしてくれるのですから。ドトールは「ビジネスとして成り立つ」ときちんと計算してから乗り込めば良い。


「ありがとう理論」はいろんな場面で見られます。叩き売りの対象になっていた食用油市場で花王エコナクッキングオイルを生み出し、ヒットしたところで日清オイリオが乗り込む。食用油市場は叩き売りから逃れ、高付加価値化の流れに乗ることができた。日清オイリオからすれば「花王さん、新たな市場創造をありがとう。その市場で勝たせてもらいますね」という気持ちでしょう。


ありがとう理論が上手な企業の代表はパナソニックでしょうか。斜めドラム洗濯機も、蒸気のレンジも自動清掃エアコンも、多くのものが他社初です。まあ、ただマネするのではなく、更に付加価値をつけて乗っかってくるのがすごいのですが。ありがとう理論のモルモットにされる代表的な企業はかつてはソニーでした。しかし今は。。。


このありがとう理論、追随して乗っかる企業にとってはとても効率的なのですが、乗っかられる方はたまったものではありません。追随企業が存在することを前提として戦略をつくる必要があります。しかし、それも難しい。日本でベンチャー企業が育たない理由のひとつは、既存の日本企業のありがとう理論の上手さも関係しているのかもしれません。

私は読んでませんが(笑)参考文献です

創造的模倣戦略—先発ブランドを超えた後発者たち
ティーヴン・P. シュナース
有斐閣
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