難時のリーダー

先日よりリーダーの話や営業マンの性格の話をしていて、三枝先生の書籍の問題意識も経営者育成ということもあり、いまのこの環境でどのようなリーダーが求められているのか考えてみた。


まずは環境要因を除いて、「リーダー」として思いつく経営者。

まずは、松下の中村会長でしょうか。中村会長は松下をどん底から救った名経営者です。一番の特長は切断力だと思います。業績悪化を招いた病巣をぶった切り、新たな概念を打ち立てさせる。


「場を整えるリーダー」としてはエルピーダの坂本社長が書籍にとりあげられていました。人が動きやすい、情報をうみだしやすい環境、組織を整えることで現場が持ちうる能力を発揮させる。


自らのたぐいまれなるコンセプト創造力を源泉にしたカリスマ性で人を惹き付けて率いるスティーブ・ジョブス


ここに挙げるにはキリがありませんが、コマツの坂根会長、TDKの澤部会長など尊敬すべき経営者がいて、いろいろなタイプのリーダーがそれぞれ素晴らしい業績をあげていると思います。


しかし、現在のような環境、つまり、組織は荒れておらず、事業や組織の病巣をごっそり切り取るほどの外科手術を必要とするほど事業も負けていない、ただ外部環境は先行き不透明だというときの、難しい環境下のリーダーとはどんな人なのか。新たな斬新なコンセプトや事業をガーンと打ち立てるというよりも、現状からの微修正を積み上げて徐々に船の方向を変えていくようなイメージのリーダー。


出光興産の天坊社長を挙げたい。

先頭に立って物事を動かすことを好まず、コンセンサスを重視するが、決して芯がない訳ではない。ソフトな物腰を保ち続け、人の話をよく聞き、自らの主張は声を荒げることなく、理路整然と説くことで「この人の考えた方に合わせれば大丈夫だと思わせられ」、いつしかファンの輪が広がっていく。そうしていくことで全社を方向付ける。


今求められているリーダーは熱き心で引っ張るリーダーよりも、時間をかけつつも冷静に理路整然とコンセンサスを積み上げさせられる人なのではないか。その人の背景には強固な個性よりも、環境に合わせて考え方や情報をチューンアップし続けることで納得性を高められる人。先行きが不透明だからこそ強引に突っ込んでみるのではない。着実に計算を積んで目の前の霧を晴らしていく作業。こういうリーダーだと思う。


もちろん根底に出光のユニークな経営理念、哲学が全社に根付いていることも関係しているかと思うが、「訳が分からないからこそ理路整然」というのは見習うべきところだ。(出光の経営哲学は参考資料をご覧下さい)

参考資料

出光 天坊社長:「強いリーダー 出光興産 天坊昭彦社長 外柔内剛、2手先を読む」『日経ビジネス』2008年9月1日号
松下関連:松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)伊丹 敬之 ほか著, 有斐閣 (2007/12/25)