転がり落ちるパイオニア

創業家が2005年末にやっと退いてから、2年と10ヶ月、須藤社長も出血をとめることはできなかったようです。

イオニアは30日、須藤民彦社長が11月15日付で辞任し、後任に小谷進常務が16日付で昇格すると発表した。同社は同日、2009年3月期の連結業績予想を下方修正し、最終赤字が780億円(従来予想は190億円の赤字)に拡大する見通しになった。須藤氏は業績悪化の責任をとって辞任する。小谷氏はカーエレクトロニクスの営業や海外事業を担当してきた。須藤氏は取締役として残る。

パイオニア、須藤社長が業績悪化で引責辞任 後任に小谷常務(NIKKEI NET)


イオニアはプラズマを出したころから注目しており、KUROを出した時には見直したものでした。プラズマの先駆けとも言っていいパイオニアが、これほどに赤字を垂れ流す大失敗を犯したのは、須藤社長の前の社長である伊藤氏でした。

パイオニア、PDPとDVDレコーダ不振で社長交代−カーAV出身の須藤氏が昇格。「原点回帰を」(AV watch)


私が肌身離さず持っているノートに、日経ビジネス2004年5月3日号に掲載された伊藤元社長のインタビューの一部がメモしてあります。松下がPDPに資源を大量投入してダントツのシェアを獲得することを目指していることに対して、「トップシェアを狙っている訳ではなく、身の程のシェアを大事にしていきたい」と述べています。


私はこの発言を自らを戒める、戦略の大失敗としてメモしています。テレビ製造など、装置産業においては大規模に投資して他社を圧倒的に凌駕する生産体制を整え、生産コストを引き下げながら一気にシェアを取るのが常識です。大量に生産することでコストが下がり、品質も向上し、次の製品の売りとなる高付加価値化の種も発見できる。


なのに、パイオニアはこれを放棄した。これでは製品価格は高止まりし、カイゼンも進まない。売れる商品はつくれない。松下が大規模投資したのに後追いしなかった瞬間から、PDPの事業の命は絶たれていたと断言します。


伊藤元社長の尻拭いを好調だったカーAV部門出身の須藤前社長が抜本的な外科手術をしてくれると思っていましたが、かえって迷走した印象も持ちます。他部門に気を遣ってしまったんでしょうね。


今度の小谷新社長はその大不振のホームエレクトロニクス部門からの社長昇進。自らが何年間も垂れ流している大赤字になんらかの手が打てるのでしょうか。。。


追記
2008年10月31日の日経産業新聞にパイオニアについての解説記事がでています。泣けます。