【書評】「オンリーワンは創意である」シャープ町田勝彦会長

戦略とは差別化である。その要諦は選択と集中にある。
かつて「関西の三流家電メーカー」といわれていたシャープを「戦略」によって「世界一を争う液晶メーカー」にしたシャープ中興の祖、町田会長の書籍。シャープの意思決定を平易な言葉を用いてつまびらかにした、自分のビジネスを骨太にすることを助けるビジネスパーソン必読の良書である。
(町田氏はテレビへの特化の功績者で液晶への特化は辻現顧問の功績と私は思っています)

まず、「オンリーワンは創意である」タイトルが良い。「創意」はシャープの経営信条のひとつであり、工夫と改善に努力して、他社にないものを追求せよというシャープの行動指針である。ただ、他社にないものをつくれというかけ声を掛けただけでは素晴らしい商品が生まれるはずが無い。それを可能にしたのが、町田社長の戦略、すなわち「選択と集中」である。


町田社長(当時)は液晶テレビに特化することを決定する。液晶は過去の技術蓄積があり、外販の販路も多い。テレビにこだわったのは家電の顔となる製品であり、キーデバイスとなるからだという。ここで成否を分けたのは液晶に集中すると決定してからは資源を徹底的に注ぎ込んだことだ。多くの企業はリスクヘッジとして複数の分野に投資を行う。それでは注力分野が競争優位を確立するほどの地位を築くことは難しい。結果的にどの事業も3番手くらいの事業にしかなり得ず、徐々に市場から姿を消す。先にも言った通り、戦略は差別化である。他社との差別化はもちろん、自社内の戦略に置いてもメリハリをつけて、事業を差別化していかなければならないのである。シャープは見事にこれを果たした。


選択と集中は特定分野を深堀するがゆえに、そこからの副産物も展開可能とさせる。シャープの場合は、液晶をうまく稼働させるための半導体技術も深耕され、液晶関連技術が太陽電池に応用された。まさに戦略が技術をドライブさせ、技術が戦略をドライブさせた。

本書の魅力はまさに戦略の中枢にいた人物が戦略について語っていることにある。学者ではなく、経営者である筆者の思考様式がビジネスパーソンの脳を刺激することは間違いない。


オンリーワンは創意である (文春新書)
町田 勝彦
文藝春秋
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