百貨店は各企業1店舗へ

伊勢丹吉祥寺店の閉鎖三越池袋店、鹿児島店の閉鎖、百貨店の地盤低下に引きずられるなど、さんざんな状況にある百貨店。


文字通りたくさんの商品を取り扱う店だけに、品揃えの体力(仕入れ、開発、提案力)、それを支える地力(立地、賃料)が大きな負担となり、カテゴリーキラー(死語?)の専門性と価格競争力に苦汁を飲まされているのでしょう。これは私が大学に入ったころにドラッグストアが華々しく注目されたころから言われている「百貨店に未来はない論」です。あれから15年近く経つのに、百貨店は火事のなかでも指をくわえて突っ立っていたのでしょうか。


私も「百貨店に未来はない」に大体は賛成なのですが、その存在が無くなってしまうとは思っていません。私の場合、ビックカメラもコンビニも愛用し、洋服は専門店で買っていますが、なにはなくとも伊勢丹新宿店だけは今後も通い続けると思うのです。新しい商品を仕入れて消費者に提案してくれる力、新たなライフスタイルを生み出すセンス、何よりウィンドウショッピングを含む買い物を楽しくさせてくれる空間なのです。私にとってはライフスタイル情報を受信する場でもあり、生きていくうえで不可欠な場でもあると言えます。


このことは私だけでなく、多くの知り合いもそう言っていますし、伊勢丹の人と話しても他の百貨店とは明らかに意識もスキルも高く、ライフスタイルを提案することがコアコンピタンスであると聞きました。


しかし、このコアコンピタンスは全国津々浦々の店舗で発揮するのはとても難しいと思います。地域特性にあわせると提案力は薄まり、かつ、それをできる人材は多くありません(提案できる人間が多くなればそれは魅力的なライフスタイルではなくなる)。そうなってくると、地方の百貨店の店舗閉鎖は当然のこととなり、エッジの効いた店舗が数店、もしくは1店舗のみ生き残ることになります。


競争力がある百貨店が店舗を絞り込むと、これからは全国から休みの日に「次の連休は東京に行って伊勢丹いくぞ!」という現象が出てくるかもしれません。百貨店といえる百貨店は東京と大阪にのみ存在し、みんなのあこがれの楽しいエンターテイメントの場となる。


もうディズニーランドとUSJがあって、それ以外は小さな地元の遊園地があるような構図と同じではないかと。


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武永 昭光
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