さすがJFE 肝が据わりまくり

スタバ、サッポロ、NEC、ドコモ、マツダと美しくない経営戦略をみて悪態をついてしまったので、お口直しに目が覚めるような戦略を。


JFEは日本ではまれな、大規模なmarger=統合を成功させた会社です。そのJFEが大規模投資するそうです。

 JFEスチールは東南アジアで、鉄鉱石から粗鋼を生産する高炉を建設する方針を固めた。ベトナム、タイ、フィリピンの3カ国から建設地を選ぶ考えで、総投資額は5000億円程度の見通し。早ければ2012年の稼働を目指す。米金融危機の影響で世界の鉄鋼需要は今後冷え込む恐れもあるが、中長期的にアジアでの需要拡大は続くとみて、逆風下でもグローバル戦略を加速する。
 建設するのは、前工程である高炉から、最終製品を製造する後工程までの一貫製鉄所。鉄鋼の生産規模は年500万—600万トンの見通し。投資額は後工程設備を含めて5000億円程度の見込みだ。09年春までにベトナムなど3カ国の候補地から一つに絞り、事業化調査を経て、早ければ10年中に着工する。

JFE、東南アジアに高炉 5000億円を投資(NIKKEI NET)


私が「さっすが!」と思うポイントは3点。タイミング、規模、地域の選択です。


1. タイミング
中長期的な需要拡大を睨んでこその、今の投資決定はえらい。先を見据えた意思決定です。どうしても企業は今期の業績でいかに数字をあげるかに目を奪われがちです。そのため、欧米の景気がヤバいなー、円高だなーとか、目先の事象に心を奪われると将来を見据えた意思決定が鈍りがちになります。しかし、JFEはきちんと5年以上先を見据えて戦略をつくって実行しようとしている。


企業だけでなく、個人レベルでも逆張りの発想は難しい。特に逆風下に攻める決定は恐い。夜も眠れなくなる。この北風がビュービュー吹いている時の意思決定はさすがという他ありません。


2.規模
製鉄所をつくるのに5000億円かかるのが普通かもしれませんが、この規模の投資は企業の屋台骨を揺るがす規模です。この規模を次の成長のために投下するのがすごい。並の企業であれば合弁とかにして弱気な姿勢を見せるのですが、一気呵成の資源投下は戦略論の理にかなっていると思います。


前にも書いたことがありますが、戦略とは差別化であり、その要諦は選択と集中です。他がやらないことをやる。やると決めたら徹底的に資源を投下する。JFEはまさに教科書通りの戦略をとっています。


3.地域
BRICsという言葉はいつ頃できたんでしょうか?私も普通に使ってきたんですが、思い込みは恐いですね。日本企業にとって大切な海外とはTRICsであるという研究があります。Tはタイです。ブラジルよりもタイを日本企業は重視しているというのです。ブラジルには強い鉄鋼会社があるからだとは思いますが、JFEもタイや東南アジアをにらんでいる。市井の言葉遊びに踊らされない、現実的な分析がなされた上での意思決定であることがわかります。


個人レベルでもこの素晴らしい意思決定を見習いたいと思う今日この頃です。


JFEの合併について詳しい本  TRICsについて言及してある本
         



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