よほどの売りがないと成功しないサッポロのポテチ

やっちゃった。

サッポロホールディングス(HD)はスナック菓子事業に本格参入する。年内に群馬工場(群馬県太田市)に生産設備を新設。来年2月をメドにサッポロブランドでポテトチップスをコンビニエンスストアやスーパーで全国発売する。高齢化などが響いて主力のビール事業が縮小しており、食品を事業の柱に育てる。
 新商品はジャガイモを遠赤外線で焼いて作る日本では珍しいタイプ。油は味付けに限るため、油の使用量は100グラム当たり12グラムと、通常の揚げるタイプの半分以下という。想定価格は33グラム入り150円前後。同じ量のポテトチップスよりは割高だが、カロリーを抑え、健康志向に訴えることで、需要を開拓する。

サッポロHD、スナック菓子に本格参入 ビール低迷で多角化(NIKKEI NET)


ポテトチップスはカルビーが約70%のシェアをもつ市場で、コイケヤや海外物のポテチがしのぎを削ります。また、視野を広げてスナック菓子だと、ハウスや江崎グリコ明治製菓、森永製菓、ロッテ、ヤマザキナビスコなど蒼々たるプレーヤーがしのぎを削っています。競争が激しいため東ハトの業績が芳しくなかったことは記憶に新しいはず。

ポテトチップでシェア7割をとれた訳 藤岡 健二氏 カルビー取締役副社長(IT PRO)


そんな厳しい市場に新規参入しようなんて。サッポロさん、正気ですか?(by ケンコバ


競争が激しいということは価格競争も起こりやすくなってきて、価格低下圧力によって利益が圧迫されます。さらに売ってもらうためには店頭の棚のスペースを取ってもらう必要があり、販売奨励金も積み増さなければなりません。ただでさえ儲かっていないサッポロがそんな体力あるんでしょうか。


っていうか、カルビーを棚から排除できるほどの交渉力を小売店に対して有しているんですか?ビールのパワーがスナックに使えるんですか?答えは明らかに否でしょう。


さらにスナック菓子のターゲットは誰ですか?子供ですよね。日本は明らかに少子化に突き進んでるじゃないですか。市場がシュリンクしているところに入ってどうするんですか?


じゃあ、海外展開目指すって?あんなにかさ張る割に単価の安い商品ないでしょう。重量あたりいくらになるんですか?輸出は無理。


ただ、ものすごい商品力を持った商品が既存市場を破壊することはあります。ヘルシア緑茶、エコナクッキングオイルなどは好例です。でも、このポテチは今までの概念を180度覆すような、魅力ある製法なんですか?特保とってますか?っていうか、スナックに健康志向を求める子供っているの?

赤字を垂れ流して、2年後に撤退でしょう。だれがこんな絵を描いたんだ?


なんだかあまりにヒドい戦略を目の当たりにして、語気が強まってしまった・・・落ち着け、私。

業績が悪化した企業ほど藁をも掴む思いで、新たな市場に新規参入をしようとしたがります。しかし、そのほとんどが失敗します。技術の蓄積がなく、成功のためのビジネスシステムを築きにくいからです。業績が悪い時こそ、本業の悪いところを修正し、ムダを省く必要があります。コスト削減の神髄は仕事のやり方を変えることです。そのプロセスの中で高付加価値化の種が見つかるのです。


サッポロさん、まず本業のムダ取りから極めてみてはいかがでしょうか。隣の芝は青くありません。


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